新人時代、研修内容をそのまま伝えていた私
FPとして働き始めた頃、私は毎日がインプットと実践の連続でした。
研修では、人口動態や世界経済の構造、株式市場の仕組みなどを学び、
「世界株式への投資が長期的に理にかなっている」という説明を繰り返し聞きました。
その根拠はこうです。
- 世界全体では人口が増加するが、日本は減少傾向
- 人口増加に伴い物価上昇が期待できる
- 過去30年間、世界株式は成長してきた
合理的で、数字にも裏付けられた考え方。
そして私は、それが“正解”だと信じていました。
「世界株式がおすすめ」の根拠
当時の私は、この根拠を「伝えれば伝わる」と思っていました。
人口が増えれば、食べ物や衣服が必要になる。
企業が成長すれば株価は上がり、投資家に利益がもたらされる。
とても分かりやすいロジックです。
そして実際、多くのお客様は興味を示してくれました。
「なるほどね」「じゃあ、考えてみようかな」
そんな反応をいただくたびに、
「やっぱり世界株式が正しいんだ」と自信を深めていったのです。
お客様からのひと言が教えてくれたこと
そんなある日、忘れられない出来事がありました。
あるお客様に、いつものように世界株式が合理的であることをお伝えしました。
しかし、その方は少し悲しそうな表情で言いました。
「確定拠出年金で日本株を選んでいるけど、
それを否定された気持ちになりました。」
衝撃でした。
私はただ、合理的だと思う情報を届けただけ。
それなのに、その方にとっては
“自分の選択が間違っている”
と言われたように感じたのです。
このとき初めて、
人の選択には、その人の背景や想いがある
という当たり前のことに気づかされました。
気づいたのは、正解より大切なもの
「世界株式が合理的」という情報そのものが悪いのではありません。
しかし、
相手の状況や気持ちに寄り添わずに伝えることは、
正しさの押しつけになってしまう
ということを、この経験から学びました。
投資には「絶対の正解」がありません。
- 家庭の状況
- 過去の経験
- 考え方
- リスクの取り方
こうしたものは人によって異なります。
つまり、
FPができるのは “判断材料を提供すること” であって
“正解を押しつけること” ではない
と、強く感じるようになりました。
情報提供の幅を広げ、決めるのはお客様へ
この出来事をきっかけに、私は提案スタイルを大きく変えました。
- メリットとデメリットを両面から説明する
- 商品に寄せすぎない情報提供をする
- 決断はお客様に委ねる
- 判断に迷ったときは、寄り添いながら一緒に考える
「おすすめ」を一つに絞り込むのではなく、
“選べる環境を一緒につくる”
という姿勢を大切にしています。
もちろん、決められないときは背中を押すこともあります。
けれど、それはその人が自分で考え、
納得したうえで進めるための後押しであり、
押しつけではありません。
その学びを、今のブログにも
この経験は、今のブログにも活きています。
私は、
「これが正解です!」
とは言いません。
大切なのは、
情報を知って自分で選べるようになること。
世界株式が合う方もいれば、
日本株が心地よい方もいる。
投資をしないという選択が正しい人もいます。
だからこそ、このブログでは
できるだけ多くの選択肢を知るきっかけになるように
情報をお届けしたいと思っています。
まとめ:FPの本当の役割とは
新人時代の失敗を通じて、私はこう学びました。
FPの仕事は「正解を教えること」ではなく、
その人に合った選択ができるように支えること。
そして、
選んだ答えに寄り添うこと。
あの日、
「否定された気持ちになった」と伝えてくれたお客様には
今でも感謝しています。
その言葉がなければ、
私は“正しい答えを売るFP”のままだったかもしれません。
これからも、
誰かの選択をそっと支えられる存在でありたいと思います。

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